2013年3月5日火曜日

スキーブーツR&Dで作ったブーツの特徴 その9

「私の思うR&Dで作ったブーツの特徴などを書いてみようかと思います」の続き。

私のブーツにどんな加工がされているのかを一部紹介するため、脚の写真とかインナーの写真とかシェルの写真とかを交えて書いてみます。

文中に出てくる、私を満足させてくれなかったプロショップの話は1998年ごろまでの話です。今では技術力も上がってもしかしたら対応してくれるところもあるかもしれません。それでも私は2008年に一回失敗していますけどね。


1.私の足
私の足は、舟状骨(写真1、赤丸部分)が出ているのと、足の外側のカーブがかかとに近いところまで膨らんでいる(写真2、赤四角部分)のがめんどうなところ。

写真1


写真2

舟状骨についは、どこのプロショップでも「これは出さないとダメだね」と必ず指摘されるのですが、なかなか満足行く結果にはなりません。
理由ははっきりわかっていて、舟状骨の下の部分(写真1、青四角部分)があたって足の内側が持ち上がり外反状態になってしまうからなんです。

でも、ここを出してほしいというと、当時のプロショップの方々は、
「ブーツのソールがねじれるかもしれないから無理」
「そんな低いところはシェルだしできない」
とか言われてがっかりでした。
中には、
「インソールで隙間を埋めれば大丈夫。ポスティングでできますよ」
とか言い出すショップもあり、このときはもうなんと言っていいのかわからないほどあきれました。
私は足が外反しないように内側を下げたいという話をしているのに、「隙間を埋めれば大丈夫」ってどういう見識なのかな?という感じです。


小指側も、小指球の脇(写真2、赤い矢印部分)は、どこのプロショップでも広げてくれるのですが、そこから踵に向けてのカーブに言及することはなく足がしびれて困っていました。フォーミングでどうにかすることがたいていでしたが。

2.R&Dでのインナーのマーキング
そんな足を持っているので、どんな風にマーキングされるのか興味がありました。

まず、親指側。舟状骨の場所にもマーキングされていますが、その下に横方向に広い範囲でマーキングされています。
最初のブーツを作ったときは、過去のプロショップで無理と言われていた部分だったので、
「そこ広げられるんですか?今まで技術的に無理だと言われてたのですが?」
とマーキング中に聞いてしまいました。もちろん答えは問題ないとのこと。
初回の時はできあがる前からこのマーキングだけでテンション上がりました。
残念ながら2回目以降は、同じ解なので感動は薄れましたが。

写真3

小指側は、小指の付け根あたりと、ここからかかと方向に向かって一番飛び出ている小指球の部分、膨らみが収まった部分の3カ所にマーキングされています。
小指球部分はともかく、その前後をこんなにひろくマーキングされるとは。
ここも、
「え?そんなに広い範囲が関係するのですか?」
と聞くと、私の足はここのカーブを作るのも面倒なところなんだそうです。

写真4

どこに手を入れなくてはいけないかという見極めも違うのだから、結果が違うのは自明だな、と思いました。

3.できあがったシェル
色が白で、最近加工もきれいになってしまったので目立ちませんが、指で触るとまったく違うカーブになっていることがわかります。

親指側
舟状骨の部分が出ているのはもちろん、その下にある肉が入るためのスペースや、外反が解消されたことによって当たってしまう足の甲を入れるためのスペース(写真5、青四角部分)が広い範囲で膨らまされています。
それと、拇指球まわりもかなり出してありました(写真5、青丸部分)。
どちらも、面で加工されていて、ピンポイントで押し出したようなものとは違う加工になっていました。
写真5

小指側
小指の付け根から、小指球からかかと方向まで新しいカーブになっています。
小指球(写真、青四角部分)は、一回りシェルのカーブが大きくなっています。
さらに、小指球からかかと方向にかけて(写真、青楕円部分)も、元のシェルとは違うカーブで広げてあります。

写真6

と、こんな加工がされていました。
履いてみると、外反も解消されて足裏はブーツソールにべったとのっかるし、小指側の痛みもありません。もちろん、ゆるいということはなく、ノーマルインナーなのにブーツからの圧に偏りもなく履けます。最初に履いたときは、適度な圧迫感に気持ちいいと思ったぐらいです。
また、こんなに大きくいじってもジオメトリというか、足の軸線(X, Y, Zの3次元で)がびたっと合っているがすごいです。ここまで正確だと、床の上でもわかるぐらいでした。


また、カント調整はニュートラル位置でした。これも聞いてみると、意外な回答が。
カント調整機能は、足が真っ直ぐ入っているのを前提に、アンダーステアとオーバーステアの調整をするためのもの。これでスネの傾きをアジャストするためのものではないと。(えぇ!そうなんだ!とびっくり)
ブーツのアッパーカフはフレアに設計されているし、普通に歩ける人なら、きちんとシェルをあわせてインソールをいれれば、カント調整でアッパーカフを傾けるなんてことはしなくていいとのこと。もっといえば、ヒンジ位置の打ち直しとかカントプレートとかも要らないそうです。

今まで苦労していた足が、こんなにべたっと入るのであれば、確かにそういうのは要らないだろうなぁと納得してしまうほどのできでした。

おまけ
シェルの内側は、親指側も小指側もざらざらに加工されています(写真7,青丸部分)。
これはシェルとインナーが滑ってしまうのを防ぐため、摩擦が大きくなるように最後に一手間加えてわざわざ加工しているんだそうです。
さすがにこの全面にわたってシェルのカーブを変えているわけではありません。
ここについての効果のほどは、比較したことがないのでよくわかりません。
もうこういうものだと思って使っています。
写真7

5 件のコメント:

たっくん さんのコメント...

凄く特徴のある足ですね!

R&Dさんの、経験と技術の素晴らしさが分かります。
息子もそのうち、ブーツのチューニングが必要になるのかな?
又出費がかさむな・・・

kz さんのコメント...

たっくんさん

私の足は面倒な足ですね。娘も同じように舟状骨がでているので、いつこれが顕在化するかどきどきしています。
息子さんの足もそれほど手間のかからないものだといいですね。

R&Dの経験と技術は確かにすばらしいのですが、これだけの知識と技術が投入されていると、それに対する適切な対価が必要で、安くはなりません。
私は、ほしいブーツが唯一提供されているので対価が妥当と思っていますが、万人にそうなのか、となると別の評価となると思います。これも面白いネタなので別のエントリで書いてみますね。

katsumune Suzuki さんのコメント...

いままで、様々なブーツチューンのお話を聞きましたが
大半がフィッティングに偏ったものが大半の中
R&Dは本当にチューンなのが伺えます。

対価!
確かにソコが、現実的には難関。

ただ、こうして体験談を御聞き出来ると興味は尽きないですね。

kz さんのコメント...

Katsumune Suzuki さん

そうなんです。フィッティングも解決しますけど、それだけじゃないところがすごいと思います。
たとえば、スネでブーツを押すときの支点の高さなんかも、ブーツのモデルごとにこれは支点が高いとか低いとか把握していてブーツ選びの際にも考慮してくれるし、実際にブーツ選んだ後もチューンで調整したり(私のL10 Worldcupのアッパーカフの穴とか)するあたりは、フィッティングだけを考えていたら出てこないチューンですね。このチューンにしても、全サイズで同じチューンをしているわけでもないし、全員に同じにしているわけでもないですし。
こういうのが部分に閉じずに全体に及ぶので、「ブーツの再設計・製作」というだけあるな、って感じです。

kz さんのコメント...

Katsumune Suzuki さん

費用は安いとはとても言えないので、簡単には薦められないところなんですよね。

ただ、一流の技術者と仕事して、一流選手のフィードバックも得て長い時間で積み上げて身につけた知識と技術なんで、その対価を安くしてくれとは私は言えず、「買うか」、「買わないか」って選択をするしかないところです。

私は競技スキー指向で、しかも選手用のスキーを使いこなすことに喜んでいる部類なのですが、こういうスキーはスイートスポットが小さく正確な運動を要求するので、R&Dのブーツなしでは考えられないというのが今の状況です。

指向が大きく変われば違う選択をするかもしれませんね。